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滑走路・管制
2020年3月に完成した那覇空港の新管制塔の高さは88mで日本第2位の高さです。関西国際空港の管制塔の高さは86.4m、中部国際空港の管制塔の高さは86.75mです。成田空港の管制塔の高さは87.3mですが、2027年頃に完成予定の新管制塔は高さ約120mで、国内最高の高さとなります。
日本国内で滑走路の長さのランキングでは、1位が成田空港のA滑走路と関西国際空のB滑走路で4000m、3位が中部国際空港と関西国際空港のA滑走路で3500m、5位が羽田空港のC滑走路が3360mとなります。伊丹空港のB滑走路、新千歳空港のA滑走路、B滑走路、那覇空港の第一滑走路はどれも3000mで、羽田空港のA滑走路と同じ長さです。
成田空港は全長4000メートルのA滑走路と2500メートルのB滑走路の2本。羽田空港は3000メートルのA滑走路、2500メートルのB滑走路、3360メートルのC滑走路、2500メートルのD滑走路の4本。新千歳空港はA滑走路、B滑走路の2本で、共に3000メートル。福岡空港は2800メートルの1本。なので、成田・羽田・新千歳・福岡の順番になります。
写真:成田空港空撮
平らな車体に何やらすべり台のような装置がついたこのクルマ、『ベルトローダー』という旅客機の運航に欠かせない地上支援車両なのです。旅客機の客室下には手荷物や貨物を乗せる貨物室があります。この貨物室は専用のコンテナを使用する部屋と、バルクカーゴルームと呼ばれるバラ積みで搭載する部屋があります。このベルトローダーはバルクカーゴルームに荷物を運んだり、降ろしたりするための車輛で、すべり台のように見える部分はベルトコンベアになっています。
羽田空港で1日20便以上運航の国内線の路線は、多い順から福岡空港が55便、新千歳空港が51便、那覇空港が34便、伊丹空港が30便、鹿児島空港が22便となります。
羽田空港のD滑走路は、2010年10月21日午前0時26分、全日空の那覇行き貨物便が出発の一番機として離陸しました。このD滑走路の供用開始により、羽田空港の発着便数は年間40万7000回へと増枠されました。
『管制官』といっても、そのお仕事はさまざま。まず、出発準備が整った航空機に対し、『地上管制官』が駐機スポットから離陸滑走路までの地上走行を指示します。滑走路近くまで走行し、離陸準備が整った航空機に対して『飛行場管制官』が離陸許可を発出すると、航空機は離陸できます。離陸後は『レーダー管制官』と交信し、航空路までの上昇について指示を受けます。また、航空路から空港に近づいた到着機は、レーダー管制官により降下の指示を受け着陸滑走路の進入コースまで誘導された後、飛行場管制官にバトンタッチされ、着陸許可を受けると指定された滑走路に着陸できます。滑走路から駐機スポットまでは再び地上管制官が走行経路を指示します。管制官はこのような流れで多くの航空機が安全で効率よく離着陸できるよう交通整理を行っています。このうち"タワー"と呼ばれる『飛行場管制官』と『地上管制官』は、羽田空港の場合1チーム14~15人で編成されており、3交代制で勤務しています。
空港では多くの航空機が離着陸を繰り返していますが、目で見えるのはその一部に過ぎません。羽田空港には安全な運航を支えるべく、さまざまなレーダーが設置されています。まず『空港監視レーダー』は見えない航空機の監視を行い、管制官へ航空機の位置情報などを提供する役割をになっています。また、飛行中の航空機だけでなく、視界が悪いときに空港内を走行する航空機や車両を監視する『空港面探知レーダー』もあります。この他にも、バードストライク防止のための『鳥監視レーダー』、進入表面に船舶が突出しないかを監視する『マリンレーダー』などもあります。ちなみに『フライトレーダー24』は飛行中の民間航空機の位置を表示するウェブサイト、スマートフォン用アプリです。
飛行場管制は空港にある管制塔から目視で航空機を捉え、離着陸の許可、飛行場面の走行経路の指示などを出します。空港から半径約9㎞、高度900mの範囲にいる航空機の離陸・着陸に対して指示を出し、安全な誘導を行ないます。また、地上管制(グランドコントロール)では、出発機に対するプッシュバックの許可を出したり、滑走路までのタキシング(地上走行)経路の指示を出します。
国土交通省東京航空局によると、令和5年1月現在、羽田空港には1日あたり1250便程度が離着陸しているそうです。24時間で割ると、離陸か着陸が1時間あたり約50回はあるということ。もちろん、深夜や早朝は一部の国際線や貨物便などで、便数は多くありません。一方で、朝7~8時台と夕方17時~18時台は多くの便が離発着しています。鉄道やバスと同じく、朝晩はお仕事で利用される方も多く、空港内も混雑しますから、ご利用の際は余裕のあるスケジュールで!
空港には離着陸する航空機に進入方向や滑走路の輪郭を示す『滑走路灯火』や『誘導路灯火』など、さまざまな灯火が設置されており、夜間のほか、日中でも視界の悪い(低視程)時に役立っています。その一つにPAPI(進入角指示灯)があります。このPAPIは横一列に配置された4つの灯火で構成され、赤および白の光を発し、航空機からは赤または白に見えます。また、その光は7.4キロメートル先からも確認できるほどの明るさです。ちなみに、航空機の進入降下角度は3度前後(地理条件により異なります)とされており、PAPIの見え方により、パイロットに適切な進入角度を光で伝えます。操縦席から4灯すべてが白に見える場合は、進入降下コースよりかなり高く、4灯すべてが赤に見える場合はかなり低いことを示しています。適正な降下コースで進入する場合は左2灯が白、右2灯が赤に見える仕組みになっています。
羽田空港では数分に1回のペースで旅客機が離発着しています。また、機体の重量が300トンを超えるような大型機も多く、受け止める滑走路には相当な負荷がかかっています。街中の一般的な道路のアスファルト舗装は数cmですが、滑走路では重量や衝撃に耐えるため15cm程の厚さが必要となります。しかし、アスファルトの下にある路盤や路床といわれる部分はさらに違いが大きく、街の舗装では数10cm程度ですが、滑走路では300cm(約3メートル)にも及ぶ場所もあります。
羽田空港は海に面しており、多くの鳥がやってきます。最も多い鳥はカモ類ですが、その他にもカモメやカワウなども多く見られます。鳥が飛行機にぶつかるバードストライクは大きな事故の原因にもなるため注意が必要です。そこで毎日、バードパトロールを実施し、空砲で追い払うなど、バードストライクが起こらないよう取り組みを行っています。
飛行機でお出掛けのとき、離着陸時に滑走路に34Rや34L、22といった文字が記されているのが見えます。これは指示標識といい、進入方向から見た滑走路の方位を磁北から右まわりに計り、10で割った整数です。また、平行滑走路がある場合はR(右)やL(左)、C(中央)といった文字も記されます。この数字や文字はすべての滑走路に標示しなければならず、その大きさや位置も滑走路の設備や大きさによって決まっています。羽田空港のように滑走路幅が30メートル以上(羽田はすべて60メートル)ある滑走路の場合、数字の天地は18メートル以上と定められています。ちなみに、数字や文字の書体にも決まりがあります。
空港内の滑走路や誘導路には白線や文字などが記されていることにお気づきの方も多いはず。こうした白線や文字は飛行場標識施設と呼ばれますが、さまざまな決まりがあり、国内・海外を問わず基準が設けられています。日本では国際的な基準にあわせて、国土交通省航空局が設置基準を定めています。滑走路に標示される滑走路標識も複数の種類があり、標示すべき事項、設置を要する滑走路、設置場所も決まっています。羽田空港は展望デッキからも滑走路がよく見えますが、その真ん中に滑走路を横断する3本の白線があります。これは『滑走路中央標識』といい、滑走路の横方向の中心線上に設置されます。この線は幅や間隔なども決まっていますが、滑走路距離灯という灯火が設置されている場合を除く、という規定もあります。
滑走路に記される、滑走路標識は滑走路の中心線を示す「滑走路中心線標識」や着陸の目標となる「目標点標識」など、すべてに意味があり、地上からも上空からも見やすいようにさまざまな工夫がなされています。こうした滑走路標識は一般的に白色で標示されますが、北海道や東北地方など、積雪の多い地域では、降雪時に見えにくくなってしまいます。そこで、雪が降っても見やすいように黄色(オレンジ色に近い黄色)で標示されています。
航空管制官は無線通信によりパイロットに指示を出したり、さまざまな情報を提供します。また、一方、他の航空管制官と連絡を取り合って航空機の安全運航を維持しています。その際に用いられる用語は国際民間航空機関(ICAO)によって定められており、各国ともこの文書にある標準用語を用いています。主に英語が使われますが、日常会話のような英語ではなく、専門用語となります。航空管制用語には、航空会社の呼名+便名やターミナル航空路管制の名称を伝える「コールサイン」、アルファベットを識別しやすくするために「フォネティックコード」なども含まれます。
飛行場灯火にも離着陸する飛行機にその飛行経路を示す進入路指示灯、滑走路の中心線を示す滑走路中心線灯、着陸時の正しい進入角度を示すための進入角指示灯など、その種類は数十種にもおよびます。また、用途に応じて色や灯色、配置も定められています。4本の滑走路がある羽田空港には、各滑走路にこうした飛行場灯火があるため、すべてを合わせると、その数はなんと約1万6000灯にも及びます。また、エプロン照明灯を合わせると、総数は約1万7000灯となります。
滑走路には航空機が着陸する時の制動距離の短縮や雨天時のハイドロプレ-ニング現象による事故防止のために「グルービング」と呼ばれる溝があります。このグルービングは 国土交通省航空局が定めた「空港土木施設設計要領」に、滑走路の横断方向に幅6mm、深さ6mmの溝を幅32㎜間隔とすることが明記されています。この数値を維持するために、羽田空港では定期的にグルービング工事が行われます。
1日数百便が離着陸を行う羽田空港。視界不良時でも安全に着陸できるよう、各滑走路にILSと呼ばれる計器進入システムが設置されています。ILSは電波により適切な降下経路(縦方向・高さ)へ誘導するグライドパス、進入方向(水平方向)を誘導するローカライザー、滑走路の着陸進入端までの距離を知らせるマーカービーコンで構成されています。空港に隣接する羽田イノベーションシティや京浜島つばさ公園、城南島海浜公園から見える、滑走路付近の赤い柵のような装置はILSのローカライザーです。1日数百便が離着陸を行う羽田空港。視界不良時でも安全に着陸できるよう、各滑走路にILSと呼ばれる計器進入システムが設置されています。ILSは電波により適切な降下経路(縦方向・高さ)へ誘導するグライドパス、進入方向(水平方向)を誘導するローカライザー、滑走路の着陸進入端までの距離を知らせるマーカービーコンで構成されています。空港に隣接する羽田イノベーションシティや京浜島つばさ公園、城南島海浜公園から見える、滑走路付近の赤い柵のような装置はILSのローカライザーです。
ハイドラントシステムを始めとする航空燃料給油施設の管理・運営を行う三愛オブリ株式会社。
航空機への給油作業を担当する会社は複数ありますが、三愛オブリではハイドランドシステムの管理・運営に加えて、この給油業務も担っています。同社では1日約300便に給油を行っています。(※2022年8月実績)
ちなみに、羽田からの離着陸時、東京湾の近くに大きな貯油タンクが見えますが、このタンク1基で8000klから9800klもの航空燃料を貯蔵できるそうです。
拡大する航空需要に対応するため、2007年春から工事を開始したD滑走路。多摩川河口に近い海上に位置するD滑走路は人工島と桟橋を組み合わせた世界初の構造を採用しています。これは豊かな漁場でもある多摩川や東京湾の自然環境を守るためで、沖側の『埋立部』、河口部に位置する『桟橋部』、両者を結ぶ『接続部』、誘導路で羽田空港と接続する『連絡誘導路部』で構成されます。この内、桟橋部は全長約1100メートル、最大幅約524メートルを占めています。桟橋部は長さ約90メートル、直径1.6メートルの鋼管杭約1700本を海底に打ち込み、その上に2500メートルの滑走路を作りました。技術的に難しいと言われた工事でしたが、多くの建設会社が最新技術を駆使した設計・施工を行うことで、100年の使用に耐える滑走路となっています。
旅客機と比べると小さな鳥ですが、機体にぶつかると想像以上のダメージを与えたり、大事故につながることもあります。そこで空港では定期的な巡回や威嚇・駆除などを行っています。とはいえ、空港といった特殊かつ保安上の制限が多い場所のため、誰でも良いわけではなく、航空機の運航や鳥類に対する専門知識も必要となります。羽田空港の場合、バードストライクから航空機の安全を守る業務は国土交通省航空局から委託を受けた「一般財団法人 航空保安協会」が担当しています。業務においては、空砲や音響装置による威嚇だけでなく、どのような鳥類がいるのかを把握して、鳥が住み着かないような対策も行っています。
最近、よく聞かれるゲリラ豪雨や突風といった急な気象の変化。こうした気象の変化は飛行機の運航にも大きな影響を及ぼします。そこで、羽田空港には積乱雲からの下降気流をはじめとする風向や風速の急変(ウインドシアー)を検出する、高性能な「航空気象ドップラーレーダー」をいう装置が設置されています。丸いレーダードームがかわいらしくもありますが、内部には直径7メートルもあるパラボラアンテナがあり、遠く半径120kmもの範囲にわたって、雨粒の動きや大きさなどを観測しています。こうしたデータから風が急変する場所といった情報を航空会社や各機関に提供しています。
飛行機は基本的に風に向かって離陸・着陸を行います。羽田空港には4本の滑走路があり、A滑走路とC滑走路はほぼ南北方向、B滑走路とD滑走路はほぼ東西方向に設置されています。羽田空港から見て、海ほたるや風の塔は南側に位置します。南から北に向かって着陸ということは、北から吹く風に向かって、ということになります。管制官は平均風速や風向にも注意を払っていて、風向きが変わり許容範囲を超えた場合、滑走路の変更を発令します。
コロナ禍前の羽田空港では出発だけでも1日約600便が運航されていました。旅客機は行き先や気象状況、重量によって細かく燃料を搭載します。しかし、空港内に燃料スタンドがあってクルマのように給油するのではなく、地下パイプラインによる「ハイドラントシステム」を使用して、航空機の真下まで燃料が送られています。羽田空港では多くの駐機スポットまでハイドラントシステムが張り巡らされて、その総延長は山手線一周(約34.5km)よりも長い約40kmにも及びます。
滑走路の端には『34L』、『16R』といった文字が記されていますが、これは『指示標識』と呼ばれるもので、すべての滑走路に設置するよう法律で定められています。この数字は進入方向から見た滑走路の方位で、磁北から右回りに測った方位の1/10の数字です。また『L』、『R』は平行する滑走路がある空港で使用されており、Lは左、Rは右を意味しています。海外などで3本の滑走路が平行して配置される場合は中央の滑走路が『C』(センター)と表示されます。ちなみに、表示される文字や位置、大きさも法律で定められています。
空港ランプ内を眺めていると、飛行機の運航を支えるべく、たくさんの“働く車”が使用されていることに気づきます。中には遠目には用途が分からない、シンプルなトラックが機体に接続されていることがあります。このトラックは機内で使用する「飲料水」などを運ぶための給水車で、必要に応じて新鮮な清水(キレイな水)を機体に補充しています。また、お手洗いなどで使用された水は汚水専用のラバトリーサービスカーが別途回収しており、衛生面もしっかりと保たれていますからご安心を!
東京ドーム約320個分、1516ヘクタールという敷地面積を誇る羽田空港。2010年には空港南側に4本目の滑走路が完成したことで、広い空港を見渡すために、合わせて新たな管制塔が建設されました。その高さは管制塔としては日本で最も高く、25階建てのビルにも相当する115.7メートルを誇ります。ちなみに、第2位は2020年に第2滑走路の運用が始まった那覇空港の88メートル、第3位は成田空港の87.3メートルです。